図書室2
□××回目の宣言
1ページ/1ページ
ぷちぷち…っ
(……繊維、筋、血管)
私の手が何を引きちぎったのか、それは定かではない
ただ急激に冷えゆく液体と弾力のある肉塊が手の中からこぼれ落ちていく
これだから私の能力は、嫌
汚れずにはいられない
「終わったの」
「…イルミ、?」
「当たり前でしょ」
自分が佇む暗い路地の先から不意にかけられた声は、いかにも無機質無感情。正常な人間のもつ拙さとか、汚さを感じさせない
だからこそ毎回毎回聞き返してしまう
君は、人間の、イルミ・ゾルティック?
「相変わらず綺麗ね」
「相変わらず汚いね」
「私、近距離武器だもん」
「俺、遠距離武器だからさ」
仕事終わり、ふるふると頭を振れば音もなく血液が滴った
私のものではない
勢いよく飛んだのか、壁に染み付いた飛沫の跡を見て顔をしかめた
これは如何なものか。
暗殺なんて日常の1コマでしかないイルミにとって、血を浴びることなく仕事を終えるなんて容易いだろう
そんなパッと見清潔感のある男の横で黒ずみかけた血を滴らせる十代の少女なんて笑えない
(…ああ、イルミの黒い服、血飛んでも分かり難いだろうな)
仕事の報告でもしているのかカチカチ携帯を弄るイルミを眺めた
「わたし暗殺者やめようかな」
血、つくの汚くて嫌だ。
そんな軽い理由で良いのかと自らの倫理的基準を疑うが、そんなの今更だ と思い直した
むせかえる血の海で平然と立つ私達に社会や常識なんて無関係
「…黒い服着れば」
俺みたいに。
一瞬、視線が交わる
しかしすぐに逸らされた
再び携帯に視線を向けるイルミの瞳は底無しに黒くて電子機器の発する光を反射していなかった
「…ふむ、一理あるね」
「まぁ、見かけ倒しだけど」
なるほど。と言いつつ納得した訳ではない
ただ下らない理由でやめるより下らない理由でもう少し続けてみてもいいかなと思った
××回目の宣言
(またすぐ下らない理由でやめたくなって)
(またすぐ引き戻される)
------------
狩人ハマった。
イルミさんとカルトちゃんが好きすぎて絶望