小説

□ハガレン:七つの大罪
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辺りに、肉が断たれた音が響き渡った。
「がっ!」
人間が床に崩れ落ちる。この瞬間にただの肉塊になり果てたモノを、その男は見る。周りには鮮血が広がり、男もまた、返り血で、黒い服が紅くなっていた。
「うっ?!」
男は、その場にうずくまる。
「げほげほっ、かはっ、げふっ」
ぱたっ、ぱたっ、といって、男の口から血が溢れる。
それが落ち着くと、何もなかったかのように男は立ち上がり、出口に向かって歩き始めた。

男が出口から出ると、空には満月が綺麗に姿を現していた。夜だというのに、その光のおかげで、辺りがよく見渡せるほど明るい。
男は、この街で一番高い建物に向かった。

男は、その建物に辿り着くと、その屋根に登り、縁に座った。そして、夜空を見上げる。
1時間程した時、男の後ろに女が歩み寄った。
「プライド」
男―プライドが振り返ったそこには、妖艶な雰囲気を持った女がいた。
「ラスト」
女―ラストは、右手で邪魔な髪を払いのけた。
「やけに早かったみたいだけど、指令はちゃんと成功したの?」
「あぁ。一応、な」
ラストはプライドの隣に腰を降ろす。
「一応、という事は、いつもと同じに?」
「あぁ。また、だ」
プライドの背後に、ラストとは違う気配のものが近づいた。
「エンビーか」
エンビーと呼ばれたのは、男とも女ともつかない人物だった。
「全く、馬鹿だねぇ。そんなに嫌なら、やらなきゃいいのに」
「今回の指令は、私に出されていたから、いいんだ」
「そうなんだけどさぁ」
プライドは、どちらともなく訊いた。
「そういえば、ラースはどうした?」
ラストが答える。
「そろそろ指令が終わった頃だと思うわ」
「そうか」
プライドが問う前に、エンビーが言う。
「グラトニーは、違う街に向かったグリードについていったし、スロウスは2,3日戻らないで指令を終わらせるみたいだよ」
「グラトニーがグリードについていくのは珍しいな」
「指令だからよ」
はっきりした事実を言いきり、ラストは立ち上がる。
「僕とラストは指令が二つあるんだ。片方はラストとやる指令でね、ここで待ち合わせしてたんだ」
クスッと、プライドが自嘲気味に笑った。エンビーと、その横に立ったラストを見る。
「その指令、当ててやろうか?」
「いいよ?言ってみなよ」
「私の抹殺だろう?」
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