小説

□オリジナル:篭
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「だから、僕は君が嫌いなんだよ」

その言葉にも、随分と慣れたものだ。当たり前だろう、顔を合わせる度にそう言われるから。
「…知ってる」
「…その態度も嫌い。僕に対しての優しさもなにもない。お前は僕に対して優しくするべきで、そうしなきゃいけないのに、なにもしてくれない」
「…君の言う優しさと、オレの優しさはきっと違う」
「うるさい。お前は僕のものなんだから、僕の言う通りに動けばいいだけだ。なのに、お前はいつも僕から逃げる。逃げるから、僕は捕まえて、閉じ込める。…もう止めない?こんな面倒くさいこと。僕は君だけにかまっていられるほど、暇じゃないんだ」
「…なら、オレのことを忘れて、他の誰かを代役にすればいい」
その子はオレを睨んで、ゆっくりとオレに近づいてくる。
「わかってない…。やっぱりお前はなにもわかってない。だから馬鹿なんだ。いい加減わかれよ。いちいち説明するの、面倒くさいだろ」
そして、容赦なく平手打ちをしてきた。その目は、ただ、オレを非難している。 「…当たり前だ。わかるわけがないだろう。…わかれと言う方が難しい」
「…当たり前、だと?」
今度は、更に乱暴に叩いてきた。その重さに耐え切れず、オレは床に倒れる。
「偉そうな口を聞くな!お前は僕の所有物なんだ、お前に僕を諭す権利なんて微塵もないのに、なんでそんなこと言われなくちゃならない?!お前はいつもそうだ、僕を馬鹿にして拒否して無視して突き放す!僕がいつもどんな気持ちでお前を探してるかも知らないのに偉そうな口を聞いて僕を否定する!」
叩く力は段々強くなり、オレは抵抗もできずにただ殴られた。
「謝れよ!僕に謝れ!土下座しろ!そうしないと許してやらないからな!」
オレは心の中で、まるで小学生の怒り方、と思って苦笑する。
「ごめん」
荒れた息づかいが聞こえる。不満そうに息を思い切りはいて、元いた椅子に戻った。
「…そんな微妙な謝り方で許されると思ってる?…勘違いするなよ。お前は許されないよ。誰が許しても、世界は絶対に許さない」
「…オレの世界は、オレを許してる」
「お前のことなんて聞いてない!」
身を乗り出しても、すぐに背もたれに体重を預ける。
「…お前なんて大っ嫌いだよ。…出て行け。僕に顔を見せるな」
オレは何も言わずに、部屋から出た。
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