小説
□オリジナル:私だけのサンタクロース
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さぁ、眠りなさい。
眠れば、きっと優しいサンタさんが、プレゼントをくれるから…。
そう言われて育ってきた私は、今、やっと、それが嘘であることを知った。
「…訊いてもいいかしら?お母さん」
母は答えず、しかもこちらも見ない。その背中には、冷汗をかいているようだ。
私は、そんな姿の母に、罵声とともに、プレゼントとなるべきぬいぐるみを投げつけた。
「あんたの、子供への仕事を、何故あんたの娘である私が手伝わねばならん!」
…そう、『優しいサンタさん』の正体は、私の母だった。
私の家は、古くからサンタクロースを輩出している家系だ。昔は、男性が家業を受け継いでいたらしいが、今はその面影は一切なく、母の仕事場には、女性用の下着やら仕事衣装やらが点在している。
私は、その家業をまだ継いでいない。成人するまで、その仕事には触れられない、はずだった。
だった。つまり、過去形だ。