小説

□オリジナル:哀しい話
1ページ/3ページ



この世には、哀しい子供がたくさんいる。どの子も、色々な理由で哀しんでいる。
これは、そんな子供の、哀しい物語。しかし、これは、ほんの一部でしかない。それは、何でもない、真実。



「…炯。お前、こんな所で何してる」
「んー…。寝てるように見えない?」
男とも女ともわからない子供が、男とも女ともわからない大人に話しかけた。炯と呼ばれた大人は、眠そうな目を擦って、上半身だけを起こした。
「劉も一緒に」
「寝ない」
「つまんないの。添い寝してもらおうと思ったのに」
「つまんないこと言ってないで、博士の所行ったら?」
炯が、嫌そうな顔をしてため息をついた。
「あのジジイ、嫌いなんだよね。なんて言うの?僕を見る目がいやらしいって感じ」
「ジジイ言うな。あれでも、一応私達を養ってくれてんだから」
また炯が嫌そうな顔をした。
「…しょうがない。劉のために行ってあげよう」
「何様だよ、お前」
「今更何言ってんの。決まってんじゃん」
炯は立ち上がって、劉を見下ろして言った。
「天下の炯様だよ」
そう言って、研究所に向かった。

「…否定できねぇな、あれ…」
炯が去ってから、劉はぼやいた。




「何でしょう、博士」
研究室に着いた炯は、不機嫌な顔をして言った。
「とりあえず脱げ。調べてやる」
そこにいた白髪の老人は、炯を見ずにいきなり言った。
「…もう少し遠慮というものを知っていただきたいです」
「お前にどうやって遠慮を覚えればいいんだ?」
炯はすぐに服を脱ぎ始める。
完全に脱ぎ終わった時、博士は嫌そうな顔をしてため息をついた。
「お前の体は、どうしてそんな科学者にとって楽しい体をしてるんだろうな」
炯のその体は、女でも男でもなかった。
 
 
 
 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ