小説

□オリジナル:悪魔と鬼
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そこは、人間とは相入ることのないものが蔓延る世界である。

「クリスー」
頭に二本角の生えた人間の姿をした鬼が、黒い羽根が背中から生えた悪魔の家の前で、その家の持ち主であるものを呼んだ。
「今行くよ、エド!」
鬼はエドワード、悪魔はクリスチャンだ。
クリスチャンは羽根を動かしてエドワードの隣に立った。
「お待たせ」
「ん。じゃ、行こうか」
エドワードはクリスチャンに抱かれ、クリスチャンは羽根を動かした。羽根は、風を切るように早く羽ばたく。
「今日はどこに行くの?クリス!」
風の音に負けないように、エドワードが大声で言う。クリスチャンも同じように答える。
「ニホンって国、知ってる?」
「知ってるよ!鬼の中じゃ、かなり有名だよ!」
「そこの人間の血は、すごくおいしいらしいんだ!それを食べに行こうと思ったんだけど、いいかい?」
「いいよ!いつも通り、血以外はもらうよ!」


「さぁ、ついた」
クリスチャンがエドワードを降ろした場所は、学校の屋上だった。
「さぁ、やろうか」
クリスチャンが舌なめずりをしながら言う。
「若いのと歳とったの、どっちがいい?」
エドワードが、まるで狼が餌を探そうとしているかのように笑う。それに負けないように、クリスチャンも嬉しそうに笑う。
「もちろん、生き血なら若い方が美味しいよ。身体もだろ?」
「まぁね」


2匹は学校の男子トイレに入り、クリスチャンは女子生徒の、エドワードは男子生徒の格好に化け、トイレを出た。
「どこに行こうか?」
クリスチャンが楽しげに言う。
「とりあえず、ここの部屋の10人くらいにしておこうか」
エドワードは、T‐Bと書かれた教室のドアを、何の警告もなしに開けた。もちろん、中には、驚いている教師と生徒達がいた。
クリスチャンは鼻を動かし、うっとりとした表情になる。
「いいね、この匂い。すごく美味しそうな匂いが充満してる」
エドワードも、それに賛同する。しかし、だけど、と言葉を続ける。
「一つだけ、不味そうな匂いするよね」
「あ、それ思った。じゃあ、それから片付けちゃおうか」
「そうだね」
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