小説

□オリジナル:素晴らしきかなApril fool
2ページ/3ページ

その3日後。
オレは3日前のように、素敵な笑顔満載で部屋の窓を開けた。
案の定、物が飛んできたが、今日のはちょっと違った。
「のぅわっ!?」
見事な反射神経でそれをよけ、部屋に侵入したそれを見ると、それは紙を丸めたものだった。不審に思って開いて見ると、それは幼馴染み曰わく、野蛮な男の落書きだった。
「この野郎何無断で丸めてやがる!」
「叫ぶ前に気付きたまえよ親友!」
昨日金髪頭があった場所には、茶色頭があった。オレはまた目をそらす。
「あぁ…」
「何だその反応!」
「もういいからお前自分の星に帰れ」
「家じゃなくて星!?」
オレが言ったにも関わらず、剣一は勝手にオレの家に入ってきた。3日前のような挨拶をうちのおばさんと交わして、剣一はオレの部屋に入り込んだ。
「よう親友!来てやったぜ!」
「今すぐ回れ右して退室することを勧める」
「全く容赦無し!?」
オレは丸められた野蛮な男の落書きを、丁寧に伸ばしていた。
「ところであれは出来たのか?」
「あれって?」
剣一は当然のように手を突き出してきた。オレはお約束のようにその手に手を乗せた。剣一はその手を払い、再び手を突き出して言った。
「ナイスバディなお姉さんは?」
「誰がそれを書くと言った?」
剣一は大袈裟にショックを受けて、よろよろとよろけてベッドに倒れ込んだ。
「嘘だ…。お前はそんな嘘つきじゃないはずだ…。それなのに、何故野蛮なおっさんの落書きを伸ばしているんだ…」
「うるせぇよ。つかお前頭どうしたんだ?まぁ、そっちの方がオレの目にも優しいからいいけど」
剣一は完璧に無視して、自分の世界に閉じこもり始めた。
「こいつはこんなやつじゃない…。絵を書く時も、快く笑顔で書いてくれた…。3日前も笑顔で」
「全てに情報操作が疑われるんだが」
剣一は不意にはっとしてオレに指を差した。
「お前、3日前がエイプリルフールだからって、オレを騙したな!?」
「オレがいつお前を騙したよ。つーかエイプリルフールって…」
そこで、オレはやっと、今日が4月4日だということに気がついた。
「…あぁ。4月だったのか」
「えぇ!?今更!?」
剣一が妙に驚いて言う。オレは納得して言う。
「そうか。だからお前があんなに無意味に絡んできたのか。成程成程」
オレは剣一の肩に手を置いて、内心は大笑い、表情は冷静に保って言った。
「悪かったな、お前の渾身のギャグに気付いてやれなくて」
「このヤロー平静装うな!」
オレは、素直に剣一に訊く。
「いいのか?平静じゃなくて」
「おうともさ」
オレは一瞬置いて、剣一ににこっと笑ってやった。
次の瞬間に、大笑いをかました。
「ぎゃはははははは!」
「くそぅ、大笑いしやがって!笑うんじゃねぇ!」
「イヒャヒャヒャ、あはは、ちょ、止まんねー、あだだ、あはは、こ、腰つーか背筋痛い、あははははは!」
「笑うなー!」

そして、新しい年度が始まった。もちろん、新学期が始まっても、剣一の髪は金色になることはなかった。
あとでその時の話を聞くと、染めていたわけではなく、整髪料を使っていたそうだ。それにしたって、染め終わるまでに3時間かかり、落とすのに至っては、一日では完璧に落ちなかったらしい。そこまでして受けをとらなくてもいいと思う。
ただ、最近はそんなどっきりはないものの、ナイスバディなお姉さんを書けとしつこい。誰か口うるさいペットはいりませんか。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ