短篇
□甘ったるい
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その時嫌な光の後にすぐ大きな音に包まれて、小さな手をぎゅーっと握りしめていたような気がする……。
-甘ったるい-
パリパリと張り詰めた様子のその人は、人とは違った力を持っていた。
彼自身が雷の化身だと言い張るのだが、視てくれは私と何ら変わった所は見当たらない。
あえて言うならば成長速度が異様に早いくらいだろうか。
私と彼が会ったのはまだお互いが幼かった容姿の時だったと言うのに、
気が付けば私が小学生を卒業するくらいにはすでに、彼は社会人くらいの容姿を手に入れていたのだ。
そして滅法晴れの日には弱く、暗くジメジメとした雨の日を好む異様なその男は、とても突飛な性格の持ち主でもあった。
「本当変なの」
そう言った私の視線の先にはぐったりとした調子の悪そうな君。
「うるせぇぞクソ餓鬼」
「私鬼じゃないもの」
「ああ?」
「餓鬼って鬼って字が付くのよ?
知らないの?」
「……マセ餓鬼」
今日の天気は湿度なんて感じない爽やかな晴れ。
世間一般からすればこんなにもありがたい気温と湿度とはたまたからりと晴れ渡った高い空をみれば、いくら気分が沈んでいたとしても問題が無い限り高揚してくるはずだ。
……多少は。
でもこの男は違う。
「……頼むからカーテン締めてくれ」
「晴れてるのに?」
「晴れてるからだよ」
「……」
「おい貴様、今どうしよっかなって考えただろう」
いつもこんな感じの朝。
晴れの日は決まってそう。
でも私は君の言うことを聞く。
だって私は私であってあの落雷の日から貴方なんだもの。