短篇

□アナタガスキダカラー!
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じっとりとした湿気、体にまとわりついて汗が顎を伝う。

長い黒髪が風に揺れて、彼女はこちらを振り向いて……。

可愛い一言をいつも俺にくれるんだ。








「何見てんだよこのゲス野郎」


「ありがとうございますっ!!」


――アナタガスキダカラーっ!!



最近の女子は学校にいようが、家にいようが化粧はかかせないらしい。

休み時間になれば、大きなポーチを机の上に出しては鏡に向かって己を磨いている。

そんなことせんでも十二分に愛らしいのでは?
クラスに人気の某先生はにこやかに言うが、それにまた触発されたのか、余計華やかになったような気がする。

みんな、クラスにはいくらだって男はいますよ!

例えば俺とか俺とか俺とか――。


「何見てんだよこのゲス野郎。」


その時かちりと目があった彼女のあだ名は姫。

サラサラの黒髪は完璧で、女子の間で密かに人気の……。

「今日も小さくて愛ら――」

「それ以上口開いたら今日も授業出ないからね」

「すいません頑張ります」

恥ずかしがり屋さん。

彼女のいとこに当たるお兄様は、俺らの学校に図書室の先生としてお勤め。

だから何かある度にそこへ行っては紅茶をいただくんだそうだ。

一方冴えない俺と言えば毎度毎度蔑まされて、女子には変態扱いをされている。

今だってほら、ちょっと姫に挨拶しただけなのに、彼女をがっちりホールドして。

「姫ちゃんになに言ったの?けがらわしいっ!!」

「そーだそーだっ!!」

「変態っ!!」

「どえむっ!!」

「最後関係なくね!?
いや否定しないけど!」

女子ってつるむからイヤよねっ!!
いや、男子もつるみますけど。
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