短篇

□アンクレット
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「ねえ、そんなにたくさんいらないのよ?」

両手にたくさんのプレゼントを抱えて。
毎年二度私に会いに来る幸薄そうなあなたに、とうとう思っていたことを言ってしまった。

だってね、会いに来てくれるだけで充分なのよ?
手を握ってくれるだけで話を聴いてくれるだけでそばにきてくれるだけで、ええっとそれからそれから――

指折り数えて伝えたけれど、あなたは少し眉尻を下げて、そうかと呟いたそのあとに残念そうに笑ってた。

「日頃ほら、そばにいられ無い分、君を退屈させないようにと想っていたんだが……。
少しやりすぎたかな」

両手に抱え込んでいた色とりどりのプレゼントを、よいしょと持ち直しつつそう言って、申し訳なさそうに笑ったあなたに今度は私が申し訳ない気持ちで一杯になってしまったの。

違うのよ。
ただ一緒に楽しいお話がしたいだけなのにどうしてこうなっちゃうのかしらおかしいな……。





――アンクレット





私の家は大きな商家で、昔から代々伝わる由緒正しき家柄というものなのだそうだ。

その事を幼い頃より言い聞かされてはきたものの、だからなんだと言うのだろう。
私には転でさっぱりな話で、日頃の生活の端々の中で多岐にわたって疑問は増えていくばかりだった。

「どうしてあの人の目は笑ってないのかしら。
どうしてあの人は頭を下げてるのかしら。」

どうして?
なんで?
不思議。

「それはあなたのお父様がこちらの地域の貿易を――」

気がついたら私の疑問に答えてくれる人が現れた。

その時の私は友人はいたものの、家柄と疑問ばかりをぶつける性格からか、深く付き合ってくれる者も居らず、不思議な者として認識されていた。
上辺だけの付き合いだけを繰り返していくうちに、気がつけば顔見知り程度で私の周りには近づく物好きは誰もいなかったのである。

「私の疑問に的確に答えられる人なんて今まで会ったこと無かったわ」

そう言って横へと視線を移して見上げた先にいたあなたへ笑いかけた私は、その日からあなたと親しくなった。

後々父に聞いた話だっが、あまりにも何故が口癖な私に、困り果てた父が、的確にものを言う彼を適者として私の側に置いたのだそうだ。

「あなたの疑問に答えるようにと仰せつかりました」

そう言って笑った彼の顔は第一印象から幸の薄そうな人。

それでもいつも側にいるとても親切な想い人になった。
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