短篇

□甘ったるい
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私は植物係だった。

何の変哲もない地味な係り。


学級の授業の時にだれも手を挙げず、静まり返った教室で何故かおもむろに手を挙げてしまった。


それも今思えば運命だったのかもしれない。


毎日教室の壁際にある花瓶に刺さった花の水換えと、校庭にある自分のクラスに割り当てられたレンガ造りの花壇へと水をやること。


それが植物係の仕事。


最初はなんでそんなぱっとしない係になんか手を挙げたのか、本当にわからなかった。


でも実際やってみれば目に見えるものが自分に返ってくるわけで。


誰もが毎回大変だねやらご苦労様やらと声をかけてくれたが、自分自身大変ともご苦労だとも思ったことは最初の1、2回程だったんじゃないだろうか。


そして何日かが淡々とすぎていった。


花もたくさん咲いて、他のクラス花壇では咲いてるであろう花が枯れていく中で自分の花壇だけが光り輝いてみえた。


私は訳も分からず始めたその行為にいつの間にか誇りを持った。


今思えば毎日やらなくてもある程度目をかければ良かったのだろうが毎日の習慣はサボれない程に私の中で大きくなっていた。

朝方からその日は雨で、
学校に行く時間になってもそれは降り止まなかった。
じとじとといやな湿気をまとい降り続く雨は午後に近づくにつれ激しさを増した。

そんな日に校庭に出る行為こそが愚かな行為だったのかもしれない。

帰りの会に先生に言われた言葉。
花壇の場所。
全部があまりいい方向になかったような気がする。
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