短篇

□せのび。
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「煙草とは違うでしょ」

私がそう伝えればあなたは即答よろしく否定するけど。

「私にとっては似たようなものなんだって」

そう告げれば一つの思案と眉間の皺。

「お子さまだね」

「背伸びしてみたい年頃なのです」

「年頃ですか」

「そうなのです」
「じゃあ一口コーヒーをどうぞ」

なんて易々とあなたは持っているマグカップを私へと突き出すもんだから、不意に面食らってしまう。

「お一つ背伸びでも如何ですか、お嬢さん」

「……結構です」


鼻をくすぐる香りが一瞬強くなって、遠ざかって。

どことなく切なくなった。

別にあなたが好きな訳じゃない。
恋をしているわけでもないのだ。
ただ目の前にいるあなたに近付きたくて。

対等に並びたいだけ……、そう。

それだけなんだ。


「……、」

「入れ直す?」


手元の本から視線をこちらへと向けたあなたは、私にそう囁いて。

残っていた少量の紅茶を一気に飲み干すと、あなたにこう言いながらマグカップを突き出すの。

「……、砂糖多めで」

「角砂糖3つの…ミルクは?」

「多め…で」

それじゃカフェオレだねって笑われたけど。

苦いだけじゃやっぱり飲み込めないから。

その分量はそのままで。


暖かいカップで、二杯めは甘めのコーヒーで。

少しでも背伸びが将来実るように…。

砂糖の分量を覚えられてしまったけれど、ミルクの量はまだ覚えられて無いことに小さく安堵した。











「にっがぁっ!!」

「僕からしたら甘ったるいはずだと思うんだけど……それ」
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