コルダ
□スリープレス
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それから何日か俺は朝必そんな日のHRの後に火原にこんなことを言われた。
「柚木〜やっぱりまだ調子戻らないのか?俺に出来ることならなんでも言ってくれよ…親友だろ?」
「…あぁ」
…言えるわけがない、ましてや…親友…に、
………お前の彼女が好きなんて…
「…香穂ちゃんも心配してたぞ」
「え、」
俺が急に食らいついたことに火原は一瞬驚いた様子だった。
「『朝、柚木先輩の顔見ないと、ちょっと違和感ありますよね。』って」
……なんだよ…それ。
「…そっか、2人に心配させちゃったな。日野さんにも大丈夫だってこと伝えないとな」
「うん、そだね。あ、じゃぁ俺今日部活だから、また明日っ」
火原を見送り、俺はすぐに日野を探した。
がらにもなく学校中を走り回った。
教室にもいない。
練習室にもいない。
俺は屋上へのドアを開けた。
「はぁ…はぁ…日野…」
風になびいた髪を耳にかけながら後ろへと振り向く。
「……///」
…何で、そんな顔…///
「?…柚木…先輩…、」
俺は日野に近付く。
「…何してたの?」
日野はその質問に答えるのを少しためらったが、「……聞こえるから、……ここにいると色んな音が聞こえてくるんです。…///さっき、火原先輩の音、見つけました///」「………っ」
ガシャンっ
「!!!きゃっ」
日野を柵へと押しやる。肩を強く握る…
「先輩…痛い…」
「…何で、火原なんだよ……俺の方が…愛してるのに……」
「っ………」
「目ぇそらすなよ…」
顔を背けた日野の顎をつかみ無理やりでも自分の方を向かせる。
「……気付いてたんだろ、俺の気持ち…。」
「……ま、またからかってるんですか…」
「!!お前っふざけ…………………あぁ。……そういうことね、…お前、俺の気持ち認めたくないんだろ。そうだよな、大好きな先輩が親友と気まずくなっちゃうもんな。」
「………」
「…悪いけど、俺は……火原と親友じゃなくなっても、お前を諦めることは出来ないから…」
「……でも…あたし…、」
続きの言葉を掻き消すように日野の口をふさぐ。
「……っ…いやっ」
胸を叩く日野を力いっぱい抱きしめる……
「………っ…」
「……日野…」
ゆっくりと腕を離す……本当は離したくなかった…決して来ないこの一時を味わっていたかった…。
……俺の想いはお前を傷付けてゆく…
「…ごめん、……でも…俺はお前が好きなんだ、…それだけは否定しないでほしい……。」
日野は少し俯いて、それから走ってドアから出て行った。
去っていったドアを見つめていた。どのくらいかはわからないが、かなりの時間呆けていたんだと思う……屋上からは見える空は赤く染まっていた。
まるで今の俺の心を刺したような…血のような…
あぁ…俺は、ずるい奴だ…気持ちを伝えたって、ただ彼女を困らせるだけなのはわかっていることなのに。
……火原も…
………ごめんな…。
もういい親友を演じることはできそうにない…。
…あぁ…誰を愛し、誰を憎むのか誰に愛され、誰を許すのか…
…あぁ…
痛みを伴う…愛ならば
…消えてしまえ…