コルダ

□スリープレス
1ページ/2ページ

「香穂ちゃーんっ、おはよー!」
「あっおはようございます、火原先輩。」

『………』

「//じ、じゃぁ行こっか」
「///は、はい//」

私と火原先輩はコンクール後から付き合っていて毎日一緒に学校へ行っているんだけど、最近になってやっと手がつなげるようになりました。 ……恋人繋ぎです///… 先輩と2人で登校する時の時間が私はすごく幸せです。
………でも、その幸せもいつも校門前で終わってしまいます…うちの学校は門から玄関まで少し距離があるから本当だったらもう少し手をつないでいれるのに……いつもいつも同じところで諦めなければならなくなるのです。 その理由は……

「火原……日野さんおはよう」

車送迎で登校してくる柚木先輩……なのだ。
柚木先輩が私達の方へやってくると、火原先輩はつないでいた手を離してしまう。

私はそれが寂しくて先輩のブレザーを引っ張る…「……先輩…」

「///あ…香穂ちゃん、ど、どうしたの///」
先輩は私の顔を覗いてくる…
「//あの…もう少しつないでたいな…//」

「//////あ、でも柚木もいるし…//」

ーーーー
小声で言ったつもりかもしれないが、普通に邪魔者にされてるのはわかった
毎日毎日よくもこんな一緒にいれるな…
毎回のことなのに、火原も真っ赤になってくるし
そして俺は毎回あいつのあのふぬけた顔みる度に胸が苦しくなる。

「……火原、今日日直じゃなかったっけ?」

「…え、………あ〜っ!!」火原はそういうと、急いで玄関へと向かっていった。
「…あ…火原先輩…」
明らかに落ち込んだような日野。

「フフ…火原…行っちゃったね。」
そう言って日野に近付くと上目線で睨まれた。

…と同時にそれ以上目を合わせていられなくなる。
「?……先輩が…わざと…毎日毎日、ど、どうして邪魔するんですか…」
その言葉を聞いて俺は日野に向き直った。
「お前…よく、そんな事言えるね……お前こそ、わざとなのか?」

「…え、「香穂ちゃーん」」俺が日野に詰め寄った時火原が窓から顔を出した。
「放課後、教室行くから///」
「あ…///はい…//」
火原の声を聞いた途端、日野の顔が明るくなる。
そんな2人の会話から逃げるように、玄関へと向かった。彼女の笑顔を見ていられなかった…見たら…もっと欲しくなる。
「……あ、れ…柚木先輩?」



ーーーバンっ!!!

勢いよく屋上のドアを開け、柵からグラウンドを見る…
一限をでる気力はたった今使ってしまった。
「……はぁ」
大きなため息をつく…。(…あいつ…心臓止める気かよ…)

「…まあ俺に向けたものじゃないがな…」
「何が?」
後ろから声がした事に驚いた…というか気づかぬうちに心情を口に出していたとは。

「……火原…」
「みんな心配してたよ。…柚木が授業サボることなんてないもんね。」
火原は俺の隣へ来て、柵に体を預ける。
「……最近、元気ないよね…なんかあった?」

心配そうに俺を見つめる火原…。
でも今の俺には、その優しさすら憎くて仕方がない……自分でもどうしようもないほど嫉妬に駆られてしまう…

「…ありがとう、火原。ただ最近忙しかったから………ただそれだけだから。」
「うん、そっか。…でもなんかあったら言えよ?」
火原は本当に真剣に心配していた。

「……ありがとう。…でも火原は授業抜けてきて大丈夫だったの?」
「親友の方が大事だよ!」
にこっと人懐っこい笑顔を向けた。

「………僕もだよ。」

「じゃぁ先行ってるから休んだら来いよー」
…ガチャン。
火原が消えたドアを見る。

「……大事なものは何で1つじゃないんだろうな……」

それから何日か俺は朝必然的に会っていた日野達には会わないよう時間をずらした。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ