BLEACH
□たぶん、君を愛してた
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一目惚れって…
こういうことなのかも…
初めて見かけたのは桜がまだ蕾の頃。
名を知ったのは桜が咲き始めた頃。
初めて声を聞いたのは桜が満開の頃。
「阿散井、今日付き合えよ」
「何かあったんスカ?」
「何かねぇと駄目なのかよ、」
「いや、珍しいなぁと思って」
「あのなぁ…、あ…」
あの子…
俺が目線を遠くにずらしたのに気づいて阿散井は後ろを振り向いて、目標を確認すると、少し顔を歪ませながら俺に振り返った。
「何見てんスカ?」
「…え、いや…」
俺が急に目線をまたずらしたのに気づいて、さらに阿散井の眉間に皺が刻まれた。
「アイツ…何かしました?」
「アイツ?」
「だから、ルキアが。先輩に何かしちゃいました?」
「………」
…ルキア…ルキア…ルキア…
耳について離れないその単語…
「ルキア…っていうのかあの子。」
「…先輩?」
「…あ、いや……。じ、じゃぁな。お前、ちゃんと鬼道の練習しろよ。弱えーんだからよ、」
そう言って、あの子の名前を忘れないように、さっさと別れた。
「……え、…って付き合わなくていいんスカ…?」
その何日か後…
「あ、先輩どもッス」
「おう、……あ、そうだ。お前に聞きてえ事あんだけど…」
「何スカ?」
「いや…あのな………やっぱいいわ」
何か俺らしくねぇ。女のことでこんな躊躇してたか?
そう、俺は“ルキア”のことを聞こうとしていた。阿散井と知り合いそうだったしな…。
「は?…まぁどっちでもいっすけど…」
訝しげにこちらを見てから
「そう言えば、この間何で急に帰ったんすか?自分から誘って来たのに」
そう言えば、あの日は俺が阿散井を誘ったんだっけ。
あの後…名を耳にしてから、そればかりが頭にあったから…すっかり忘れていた。
「あ〜…悪りぃ悪りぃ。急に用あったの思い出してよ」
「そうなんすか?別に俺はいいんすけど…」
「お、おい!恋次っ私を置いていくなっ」
「…あ。っておめぇが呼んでも出てこないんじゃねぇかよ。」
「うるさいったわけ!私が朝に弱いのは知っておろうっ!!」
阿散井のでけえ図体の後ろから突如、女の声が聞こえた。
「ん?」
…………あ。
“ルキア”だ……。
彼女は阿散井に文句をたれながら前に出てきた。「まったく貴様は……え。」
ルキアが一度俺に目を合わせた。
「何が“まったく”だよ、てめぇが早く起きりゃぁな……って何後ろに隠れてんだよ」
「し、知り合いの方がおるんなら先に言わんか!」阿散井の裾を掴んで言った。
「別にいいじゃねぇか、何今更人見知りしてんだよ。」
「今更?この方と私は初対面だぞ!!」
「……は?……だって…」阿散井は面食らったようだった。たしかに俺があれだけ穴があくほど見つめているのを見てりゃぁな……だが実際は今初めて声をきいて、初めて声をかける。
「俺は檜佐木修兵だ」
二人は俺の突然の自己紹介に驚いたようだったが、少しして
「…ルキア…です。」
と、俺とは目を合わせず、下を向きながら名を名乗った。
「ルキア?」
顔を覗き込みながら名を呼んでみた。
「//…あの…」
あ、顔上がった。
「ルキア。」
「///」
その名を呼ぶだけで何だか心がざわつく……だが心地いい…
「ちょっと先輩、何なんスカ…」
俺と彼女の間に阿散井が割って入った。
すげぇ形相で睨んでるし、
「……行くぜ、ルキア」
「わっ、ちょっ恋次!?」
強引に手を引っ張って俺から離す…
「なんだってんだ」
その日から、ルキアとも会えば世間話するようになったし、目もちゃんと合わせてくれるようになった。
でも、俺に見せる表情はいつも同じ愛想笑いで、アイツの前ではころころと表情が変わって…
“あ、笑ってる”と思うと隣にはいつもアイツがいて、
……あぁ、そうか。アイツは君に必要で大事なものなんだ。
そんなことを桜散ることに知った。