BLEACH
□似合わない煙草
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嫌いだった煙草も、
あなたが吸うようになってから嫌じゃなくなってた
その苦い香りが…
私に移り香として降りかかる。
まるで一日中あなたといるような錯覚に陥る。
二人が同日に非番になる時は滅多にない。
そんな日、何故か私は夜まで仕事を手伝っていた。
自由になった頃は既に月が満月と分かるほどだった。
仕事帰り、その足で恋次の部屋へ寄った。
入ると、煙草の匂いで充満していた。
………窓も開いているにも関わらず。
恋次と云えば窓枠に腰掛けて例の煙草を吸っている。
あ、髪を下ろしている。
「何だか覇気がないな、」
…………………聞こえてない振りか、月を見上げている。
「………?」
いつもなら、うるさいくらい意味もなく突っかかって来るのに…
「……恋次?」
不気味に思った私は窓際の方へと足を進めた。
「…おい、恋次」
「………」
その距離一メートルほどで立ち止まったルキアだったが、恋次がまだ手招きをしているのでもう数歩近づくことにした。
距離は半分に縮まり、
50センチ…
30センチ…
10……
「っ!?きゃっ」
もう睫が数えられそうなところまで近づいた時、恋次がいきなりルキアの手首を掴み、自分の方へと引き寄せた。
「////っな、な、なにをするのだ//」
「………うるせ。」
ぎゅぅっと抱きしめられているのでルキアには恋次の声しか聞こえない。
「お前……今日はどうしたのだ…」
腕の中でルキアが訪ねる。部屋に入った時からおかしかった…その前よりも変だったのかもしれない。
「具合が悪いのか…?」
恋次は胸に埋まっているルキアを見つめながら、はぁ…。と一息溜め息をついた。
「……お前…今日、非番じゃなかったのかよ…。」
「…え、」
顔を腕からのぞかせて恋次を見た。
一瞬目と目を合わせたがすぐに恋次の腕に隠されてしまった。
「だから、今日は久しぶりに二人で非番じゃなかったのかよ」
「…急に仕事を手伝わなくてはならなくなったのだ…」
「…何だよそれ、…断れよ…今日くらい…」
抱きしめる力が強くなる。
それにくわえ何だか弱々しい声にまた顔を無理やり上げた。
「…待ってたんだけど。」
「……すまぬ、私…」
恋次は腕の中で自分を見上げているルキアに顔を近づけた。
「……許さねー」
ちょっと拗ねたような顔をして触れる程度の口付けをした。
「///…恋次…アホが…。私だって…ほんとは早く会いたかった。///…もう今日はずっと恋次の隣にいる//」
顔を赤くしながら呟くルキアを、見て、また一度ぎゅぅっと抱きしめた後
「//もう我慢しねぇからな」
そう言うと恋次は開いていた窓を閉めた
もう煙草の匂いは消えていた。
月は変わらず夜を照らしていた…。