書庫(D.Gray-man小説2)
□君愛信続<キミアイシンゾク>
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周りにいる人間を信用した事はない。
こんな戦争のさなかで、人を信じる事自体が命を縮めるんだ。
それが、エクソシストの俺の普通だったのに……。
いつから俺は、お前に心を許していたんだろう……?いつからお前は俺の心の中に入ってたんだ?
なぁ、ラビ……――。
「神田、ラビと上手くいってないでしょ」
「ブッ!?」
色んな食べ物の匂いが混じる、ガヤガヤと賑やかな食堂。
その角の席に座って昼食を摂っていた俺とリナリーだったが、不意に呟いたリナリーの一言に、俺は飲んでいた緑茶を噴き出した。
「あ、ワリ……てか、何だよいきなり!?」
テーブルの上に置いてある濡れタオルを使ってそれを拭きながら、リナリーを見た。
リナリーは何事もなかったかの様にナイフでハンバーグを切り分けていた。
「当たりでしょ?この頃二人とも、どこかよそよそしいもの」
(何て女だ!気付いてやがったのか?!)
確かにリナリーの言う通り、俺達は最近行動を共にしない。
片方が任務に出ているならともかく、今日みたいに二人ともオフの日にさえ一緒にいないのだ。
だから今俺の隣に座って昼飯を食べているのも、ラビではなくリナリー。
俺とラビはいつも二人一緒。
それが教団内の通常の光景だったのに……。
「……いつから気付いてた?」
「いつからって……1週間位前からかしら?」
(1週間位前って……俺達が一緒にいなくなった辺りじゃねーか!)
今まで他の誰かにそれを指摘された事はなかった。
つまり、リナリーは皆が気付かない様な僅かな異変に反応したという事だ。
リナリー、前々から目敏い奴だとは思っていたが、まさかこれ程とは……!
「で、理由は何?喧嘩でもしたの?」
「……判らねぇ」
「『判らねぇ』って……何よ、それ?」
「知らねぇよ、んな事!気付いたらこんなになってたんだ!」
そう、気付いたら離れていたんだ。
喧嘩なんてしてないし、突き放したりは……してたけど、いつもの事だからラビは全く動じていなかった。いつもウザイ位に『ユウ』って俺の名を呼んで擦り寄って来たのに……。
「俺、嫌われたのか……?」
ラビから告られて付き合い始めても、一度として俺から『好きだ』と言った事はなかった。
愛想尽かされて当然だとは思う。
けれど、まさか本当にこんな日が来るなんて……。
(何なんだよ、ラビの奴!あんなに『ユウユウ』言いまくってたクセに、パッタリ止めやがって……)
リナリーは短くウーンと唸ったかと思うと、コーヒーを一口飲む。
「ラビに限って神田を嫌いになるっていうのは考え辛いわね」
「じゃあ何だよ?」
「それは知らないけど……ラビにも何か理由があるのよ」
「理由……」
「気になるなら、ラビに聞いてみたらいいじゃない」
「そりゃそうかも知れないが……」
「ここで聞かなきゃ男じゃないわ!いってらっしゃい!ラビなら書庫室にいたってさっきアレン君が言ってたわ」
リナリーに半ば背を押され、俺はズルズルと書庫室へと引っ張られた。
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