書庫(D.Gray-man小説2)

□屋上の二人
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時刻は昼。
4限が終わり、昼休みに入っている時間。
勿論、買い弁をしに売店に行く奴らとか、仲間や友達と一緒に教室なんかで騒がしい。
しかし、それも屋上までは届かない。
そう、俺は一人屋上に来ていた。
今は秋。
段々冷え込んできたこの時期にここに居る理由は、俺が騒がしいのが嫌いだから。
別に昼飯を食う為に来ているんじゃない。
ただ、ここが俺に合ってる。
晴れた秋空を見ていると心が落ち着く……筈だ。
けど……

「あっ、やっぱりここだったんさね!」

ガラガラと屋上への扉を開け入って来たのは、同じ3学年のラビ。

「んだよ。何しに来た?」

せっかく一人切りになれると思っていたのに、突然の訪問者の出現にイライラしてくる。
ガン掛けて睨んだら、そいつはさして怖くなさそうに言う。

「おー怖。『何しに来た』って、お昼食べに」

「別の所で食え。大体、この時期は屋上入れねぇだろうが」

秋にもなると、先程言った通り生徒は全く来なくなるし、なりより冬に近い。
屋上へ続く階段にはロープが張られ、扉の鍵は閉められている筈だ。
ラビはニコッと笑ったかと思うと、俺の隣に腰を下ろした。

「それはユウも一緒っしょ?ホントは入れない筈なのにねー?ま、俺の場合、ちみーっとは権力があるからね」

ラビは右手を開く。
そこには『屋上』と書かれた鍵があった。

「チッ……職権濫用だぜ、それ」

ラビは生徒会長をしている。
先生からの信頼も厚い。
『鍵を貸してくれ』と頼めば、楽に手に入るだろう。因みに、俺は別の手段で入った。
つまり、少し犯罪に触れそうな事だ。
……深くは言えない。

「で、何でお前がこんな所まで食いに来てんだよ。他の奴らに誘われたりしなかったのか?」

「あぁ、それなら断ってきた。俺、ココがいいんさ」

ラビは持っていたコンビニの袋からおにぎりを出し、頬張りながらそう言った。

「物好きだな、お前。ココのどこがいいんだか……」

ラビはうーんと唸ってから呟いた。

「ユウが居るから……かな?」

え?『俺が居るから』って何だ?

「俺が居るから?」

「そ。ユウが居るから。俺、ユウの事好きだからさ」

「は!??」

耳を疑った。
まさかこんな形で告白されるとは!
しかも、同じ男から……。

「お前……そっちの人間か?」

「失礼な!ホモって訳じゃないさ!いや、ホモだけどユウだからこそって言うか……!」

ラビはジュースを飲みながら『うん、ユウだからさ……』とか言っている。
顔が林檎の様に真っ赤だ。今更自分の発言に恥を感じてきたらしい。
そして、俺は更に顔を真っ赤にしていた。

「お前、俺男だぜ?判ってんのか?大体、『友達』っつー関係じゃねぇか……」

「そうだけどっ!」

ラビはバッと俺を見ると、また恥ずかしそうに顔を伏せた。

「好きなんさ……1年の時から。ユウが大好きなんさ」

「///」

(いきなりだなオイ!)

どうしたものかと考えていると、ラビは少し悲しそうな声音で一言継ぎ足した。

「返事は急がないさ。急だったしさ……でも、これだけは判って欲しい。俺のユウに対する気持ちは本気だから」

「!!」

なんつー恥ずかしい台詞をはけるんだコイツは!
でも、何故だろうか?
悪い気はしない。
寧ろコイツといると、どこか安心するんだ。
これはもしかして……

「なぁラビ。お前、俺と一緒にいて楽しいか?」

俺がいきなりそんな事を言ったもんだから、流石のラビもすぐには意味を解釈出来なかった様だ。
『へ?』と見事な阿呆面をしている。
いつの間にかジュースを飲む手も止めている。

「えっと、俺のは楽しいっつーか……安心する感じさ。あっ、だからって楽しくない訳じやないさ!」

つまり、コイツと同じ気持ちという事だ。
ならこれは……

「俺も好きなのかもな……」

「え?」

ラビが俺の方に振り返る。

(しまった、言ってしまった……)

俺はハッと気付き、つい先程言った言葉に赤くなる。

「いや、何でもねぇ!気にすんな!」

しかしラビはお見通しみたいで……

「何々ユウ、さっき何て言ったの?俺に言えない事?」

「ちげぇよ!その、だな……あ!新しいゲームが面白かったんだよ!」

苦しい言い訳。
自分でもそう思う。
だから呆気なくこの嘘は見破られた。

「ユウはゲームしないじゃん」

「……」

「黙ってないでさ、教えてよ」

そういうラビの目は微かに笑ってて。
コイツに嘘付いても意味がないと改めて知った。

「ちっ……お前、嫌なタイプだぜ。つくづく人の考え読みやがって」

「そ?まぁこれでもブックマン後継者ですから。……で、ユウ、お返事は?」

ラビの手が俺の手に触れる。
その瞬間、なんか判らないけど頬が熱くなった。

「……お、俺も……す、すす……好、き……」



友達は、大切だ。
しかし、ある時は『友達』という関係のせいで自分の気持ちを押し殺している場面も少なくない。
特に『恋愛』については。けれど、それを乗り越え先に進めるのも事実だ。
『友達』から『恋人』へ変わる、これはいい機会かも知れない。
END
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