書庫(D.Gray-man小説1)

□仲良しこよし(!?)
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僕アレン・ウォーカーと神田は、二人揃ってコムイさんに呼び出された。
神田と共にお互い無言で向かった僕らは、室長であるコムイさんから、最初っからウマが合わなかった神田と一緒に合同任務を全うする事を言い渡された。
その生活は、僕をほとほと困らせたものだった。







「……はぁー……」
僕は今日で何回目になるか判らない溜息をついた。その元凶は、僕達が泊まっているホテルの同室で、シャワーを浴びに行っている神田ユウの事だった。

「……どうしたら仲良くなれるかな」

彼は苦手だが、僕はなるべく皆と仲良くなりたかった。二人コンビの任務と聞いた時は不安もあったが、これはチャンスかもと思い直し、出来るだけコミュニケーションを取ろうとした。が……

「中々上手く行かないなぁ」

座っているソファの背もたれにドサッて体重を掛けながら、僕は後頭部を掻いた。そうなのだ。実は全く上手く行っていない。
神田と一緒に食事を摂ろうとしたら、『お前と食うと不味くなる』と酷い差別を言われ、買い物に行かない行こうと誘うと『一人で行け』とまともに話も聞いて貰えなかった。相変わらずに僕には『モヤシ』と言い、ちゃんとした名前さえ呼んで貰えない。ホテルで知り合った人達と暇潰しにポーカーをしていたら、彼は僕がイカサマしている事を吐き捨て外出していった。しかも仲間である僕に行き先も告げずに、である。まぁ、30分後に彼は無事戻って来たのだが……。

「そういえば、神田何か紙袋持ってたな」

茶色い、どこにでもある様な袋だが、右下に小さく名前が印刷してあるらしく、彼はそれを大事そうに抱えていたのだ。

「うーん……ま、いいか。神田の事だから、六幻の手入れ用品でも買って来たのかも」

知ってどうという事はないと考え天井を仰いだら、調度風呂から上がったばかりの神田が出て来た。
いつもの黒いズボンにYシャツという軽装で、長い黒髪はまだ水分を含んでいる。

「あ、神田。もう上がったんですか?」

神田は僕を一瞥すると、チッと短く舌打ちした。普通はでもここで僕が機嫌を損ねる所だが、流石にこういう対応をされ続けると慣れてくるもので、彼はいつもこうだと思う様になっていた。『慣れ』というより、『諦め』かも知れないが。特に気にする風もなく、僕は神田に言った。

「次、僕お風呂使いますよ?」

「……勝手にしろ」

不機嫌丸出しで神田が答える。僕は着替えの服を持って脱衣所まで行くと、見覚えのない寝間着が置いてあった。その服の下には、茶色い紙袋。

(ひょっとして、神田?)

間違いない。これは神田が持っていた袋だ。サイズを見ると、少しばかり神田には小さいと思われる。

(え……もしかして……)

僕はその服を持って神田の前に立った。僕が見ている事に気付いた神田は、読んでいた雑誌から視線を上げて僕を見た。

「何だ」

「えーと、あの神田。この寝間着は一体?」

僕は服を神田に差し出す。
「それ、俺が入ると思うか?」

思いがけない質問に、一瞬思考が止まったが、すぐに僕は我を取り戻した。

「いや、少し小さいかと……」

「どっからどう見てもお前のだろ」

……はい?それはもしかして……

「……僕の為に買って来てくれたんですか?」

神田は目線を下にして僕に顔を見せない様にした。

「お前寝間着持って来てなかったろ。寝る時位は楽な恰好の方がいい。ったく、これだからモヤシは……」
酷い事を言われているが、僕は嬉しくて仕方なかった。
だって、ずっと神田に嫌われていると思っていたのだ。けれど、少なくとも僕の身体を気遣ってくれた。それが嬉しくて……。僕はその服をぎゅっと握った。

「はい、すみません。……ありがとうございます」

神田はフンと鼻を鳴らす。


一部訂正。少しは、仲良くなれたらしい。
END
 

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