書庫(D.Gray-man小説1)

□有想
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ユウは気付いてないんさ。
俺がこんなにユウの事が好きだって事。







「ユウ、ごめんさ。許してくれさー」

ある麗らかな春の日の午後、俺はエクソシスト仲間である神田ユウの部屋に来ていた。
理由としては、この頃任務ばかりで会えなかった事と、一分一秒でも早くユウの元気な声を聞きたかったから。
だから俺はユウの部屋に行ったんだけど……あまりの嬉しさに部屋の窓を割って入っちゃったんだ。
だって庭に出て今か今かと待ち侘びてたら、ユウってばもう帰ってて、ユウの部屋からユウの姿が見えたんだもん!
そりゃあ伸で一っ跳びして会いに行くでしょう。
まぁ結局、いつもの様に加減間違えて窓にガシャーンだったんだけど。
もうそこに『窓』と呼べる物はなく、春と言っても今日は偶然にも寒い風の日。
部屋中にビュウビュウ風が入って来る。
……窓は、見事に破壊されていた。

「テメェ、手加減ってものを知らねぇのか?!!」

必死に謝る俺の前で、この部屋の主である神田ユウが仁王立ちになって怒りの黒いオーラを放っていた。

「だって、早くユウに会いたくて……気が付いたらこんな事に」

そう言って部屋を見渡す。
相変わらず何もない部屋で、唯一ユウの私物だと言う花を見た。
恐らく蓮の花だろう。
それ以外は特に印象に残らない物ばかりだ。
俺の部屋と違って、何かが山積みになってる訳じゃないからだろうけど。
一方、俺の言葉を聞いたユウは、顔はおろか耳まで赤くして反論した。

「バッ……確信犯じゃねーかよ!大体ここまでブッ壊すか、普通!つーかどさくさに紛れて変な発言すんな!」

「俺の嘘偽りない意見さ!」

……そう、俺の本当の気持ち。

「!何言ってんだ!もういい、さっさと出てけ!」

ユウは犬でも払う様に右手を顔の前で振って、俺を部屋から追い出そうとする。

「何さー。もうちょっとだけでも……」

「駄目だ」

「ひゃー、即答さー?」

それでもそんな他愛ない話だけでも嬉しいと感じてしまう俺は重症なのかも知れない。

「判ったさー。じゃ俺は帰るさ」

俺が部屋を出ようとした時、視界の端で何かを捉えた。
何もないと思っていたが、ユウの身体に隠れて見えなかった様だ。
机の上に置かれた、見た事のない小さな観賞用のステンドグラス。
この前来た時にはなかった物だ。

「なぁユウ、これは?」

「!それはその……人から貰ったんだよ!」

珍しく口ごもるユウを見て、気になってしまう。
俺は一番最初に思い付いた奴の名を言った。

「もしかして、アレンか?」

「!!」

ユウが動揺している。
やっぱり、と思った。

「そっかー、アレンが。よかったなユウ」

ユウにそう言い、無理に笑っている自分を感じる。
嘘だ。
本当はよかったなんて思ってないのに。

「別によくなんか……!」
「はいはい、そうだよね。俺の思い違いだよね」

ユウは赤くなりながらムキになって反論する。
そのまま俺は肩を叩かれ、渋々部屋を出て行った。
もやもやしたものを抱えながら。
二人の仲に入る事は出来ない。
そう思った。
身体はどこも痛くないのに、涙が出そうになる。

「……参ったなぁ」

誰もいない肌寒い廊下で、壁に寄り掛かって、自嘲する様に呟いた。
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