書庫(D.Gray-man小説1)

□冷たい意味
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俺の遠くから、爆発音が聞こえた。







「ユウ!」

俺は歩きづらい林の中を、必死に走っていた。
遠くから聞こえた、何かの爆発音。
けれど俺は、それが『何か』判っていた。
それは多分、哀しい末路を辿った者達――。
暫く走ると、俺と同じ黒服を着た長髪の人間がいた。

「ユウ!」

呼ばれた奴は、ふいっとこちらを振り返った。
しかし、『ユウ』と呼ばれた彼は、血に汚れていた。
手に持っている刀には血が滴り、顔には跳び血が付いている。
そんな奇異な光景を見ながら、ユウは口を開けた。

「ラビか……」

その声は心情を表していない。
いや、『押し隠している』。
例えその血が人の血ではなくても、本当は叫んでしまいたい位辛い筈なのに。
すぐ隣にある『死』に、恐怖を抱いている筈なのに。
全てその漆黒の瞳の中に、隠して、出さないで、一人でいる君は、とても哀しすぎるから。

「……ユウ、顔とか汚れてるさ。洗うさ」

「おい、ラビ?」

俺はユウの手を引いて林の中を歩き出す。
触れたユウの手は、冷たかった。
その冷たさが、ユウの心を表している様で……寂しかった。

「ユウはあったかいね」

「はぁ?そうか?」

「……うん」

例え外は冷たくても、芯は温かいって知ってるから。
冷たくしないと、心が潰れてしまうって判るから。
けど、それでもそんな君は……

「哀しいさ」
END
 

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