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□only name
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「なぁ坊ちゃん……」

「……」

さっきからずっとこの不毛な掛け合いばかりしている。
俺が何度『坊ちゃん』って呼び掛けても、シカトされる。
……何で?

「坊ちゃんってば」

「……」

「イギリス」

「……」

「イングランド」

「……」

「グレートブリテン」

「……」

「北部アイルランド連合王国」

「……」

駄目だ。
全く返事を返してくれない。
他に何かあったかなぁ……。
……――あ。

「アーサー?」

「……フランシス」

すると、坊ちゃんはようやく反応を返してくれた。
何で返事返してくれないのよ、そう問おうとして結局それは叶わなかった。
だって、坊ちゃんが俺に抱き付いてきたから。
驚き過ぎて瞬きするのすら忘れちゃったもん。

「お前は馬鹿だな、クソ髭」

「なっ……」

視線をずらして坊ちゃんを見ると、そこには真っ赤に染まった顔。

(あぁ……)



(アーサーって、呼んで欲しかっただけなのね)
end
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