頂き物

□真剣羽子板勝負
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琴の音色が流れている。

 新年と言うことで、後宮で主上と十三姫を前に、女官達が合奏を聞かせていた。

 きっかけは藍楸瑛が、クリスマスプレゼントに東国の島国の楽器の琴を、
 女官達に贈った事による。

 そして、正月用のかるた、羽子板も新年早々に届けられ、今年初の宴となったのだ。

「うん、美味しいぞ」

 劉輝は秀麗以外は物でつられる。珍しい物に目が無い。

 おせち、お雑煮、餅三昧。

 酒は無いが、仙洞省で清められた藍州の真水で香ばしいお茶が各種揃えられ、
 山の幸海の幸も豊富な料理が並ぶ。

 女官長として、十三姫も腕を振るった。

 劉輝の横に控えるのは、楸瑛と絳攸。他に男性は居ない。

(早く帰りたいぞ)

 絳攸は年末に仕事を仕上げられずに居たのを捕まった。

「あら」

 十三姫が隠れて見ていた珠翠の姿に気づく。

 声をかけるのをためらった彼女だったが、劉輝も気づき、彼女を呼ぶ。

「珠翠」

「主上…お久しぶりです」

「うむ。元気そうで、何よりだ。少しふっくらしたのではないか」

 ぎゅー。

「珠翠さんも羽子板しましょうよ!」

「十三姫」

「受けて立ってくれるでしょ? お兄様の奥方候補だもの」

 奥方候補ー!?

 周囲は騒然。

 勝つべきか負けるべきか、珠翠は悩み。

 直ぐに決着がつくかと思われた真剣羽子板勝負は、結局引き分けで。

「珠翠様って、運動神経も抜群でしたのねー、身のこなしも優雅で
 非の打ち所の無いほど素敵」

 女官達の厚い羨望を受けたのだった。

(やれやれ)

 十三姫は、彼女を自分の横に座らせ、宴は続いたが、
 今宵の主役は誰だったのか。

 劉輝が、ぽつんと呟いた言葉を気にかける者は居なかったようである。 

 おしまい。

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