頂き物

□「侵蝕 〜終わりの始まり〜」  三万打フリー小説
1ページ/4ページ

−−誰かこの状況を打破する術を教えて……


そうでないと、私……



侵蝕 〜終わりの始まり〜



雨が降る早春の日。

秀麗はいつものように仕事をしていた。午後には長官に提出しなくてはいけない書類がある為、若干焦りつつ筆を走らせていた。


「今日に限ってタンタンがお休みだなんて!…まぁ昨日から凄い咳してたから、仕方ないけどね…」

秀麗の裏行である蘇芳は酷い風邪をひいていた。昨日は無理をして(静蘭の恐怖のお願いのせいで)出仕していたのだが、その無理が祟り、医師から絶対安静の指示が出てしまった。

「…大丈夫かしら、熱もありそうだったし…」

元気になったら日頃の感謝も込めて、蘇芳の好物をお弁当に作ろう、そう考え、秀麗がフ…と微笑んだその時−−−


「−−ほぉ、流石は紅御史。長官への提出書類もニヤニヤしながら書けるとは」

この世で一番嫌いな人間が現れ、秀麗はあからさまに不機嫌な顔付きになった。

「−用がないなら出てって!」
「誰が用がないと言った?」


清雅は大股で秀麗に近寄り、秀麗の顎を掬い上げ、唇を重ねた。

「−−っ!」

直ぐに秀麗は突き放すが、逆に腕を掴まれ抱き寄せられる。

「−−何すんの…っ!」

秀麗は力を込めて清雅の胸を押すが、清雅の腕はビクともしない。それどころか、再び顎を持ち上げられ、必然的に清雅と見つめ合う。


「……」


弱みを見せてはいけない−−秀麗は唇を噛み締めて清雅を睨み返す。


しかし、いつもなら嘲笑で見返す清雅が何故か無表情なのに気付き、秀麗は逆に嫌な予感がした。


(…何で…?)

その瞳はまるで硝子玉のように一切の感情が消えている。


危険、危険、キケン−−


秀麗の頭の中で警鐘が鳴り響いたその時−−


「−−…きだ…」

清雅が小さく囁いた。
 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ