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□雛人形
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*雛人形☆*
ある日、秀麗の元へ大きな荷物が届いた。
「―何かしら」
箱を開けると、そこには人形やら小道具、そして説明書が入っていた。
其れは、とてもとても豪華な物だった。
「一体、誰がこれを?」
差出人の名はなく、困り果ててしまった。
「秀麗、どうしたんだい?」
「あ、父様。それがね、私宛に、このお人形が届いたのだけれど、誰がくださったのかわからないの」
邵可は、箱の中を覗くと、そこにあったのは雛人形であった。
(―そうか、黎深が。)
この間、黎深が府庫へ来て、秀麗への贈り物を造らせている最中だと言っていたのを思い出す。
そして、気配に気付き、窓を見遣れば、黎深が覗いている。
(まったく、あの子は。)
「父様、どうしよう」
「貰っておきなさい。知り合いが、秀麗に贈り物をしたいと言っていたのを思い出したよ。きっと、それじゃないかな」
「そうなの?でも、こんな高価な物いいのかしら」
「貰って良いと思うよ。お礼の文を書きなさい」
「今、書いてくるわ」
そう言うと、秀麗は自室へ戻っていった。
邵可は、窓を開け、雛人形の贈り主、黎深に話しかけた。
「いつまで隠れているんだい?」
「兄上!」
「そろそろ、秀麗に名乗ってあげなさい。」
「そ、そんなこと、できませんっ!!もし秀麗に名乗って…」
『おじ様なんか嫌いよっ!この、お人形返すわ!!』
なんて言われたら、と思うと、顔が青ざめていった。
「やはり、言えませんっ」
その言葉と同時に、秀麗が室に入ってきた。
「―父様」
迂闊だった。
黒狼ともあろう者が、娘の気配に気付かなかったとは。
「あれ、おじさん…」