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□「膝枕」 31000hitキリリク小説
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瞳に光がさしこんだ。
結局寝てしまったと後悔する。
嫌みの1つでも言ってやろうと秀麗を見上げると、彼女は咲きかけの桜を見つめていた。
考え事をしているのか、清雅が起きたことにも気づいていないようだ。
「間抜け面だな」
「あら、起きたの清雅。ぐっすりだったわね」
嫌みを嫌みで切り替えされた。
更に嫌みを言ってやろうとしたが、彼女はまた清雅をそっちのけで桜を見つめている。
「何を考えてる。くだらないことは考えるだけ無駄だぜ」
不機嫌に言った清雅に秀麗は苦笑した。
「別に。ただ、春なのね・・・って思っていただけよ」
「当たり前だろうが。もうじき桜も満開だしな」
「・・・そうね」
どこか儚げに、そしてやわらかく微笑んだ秀麗に、清雅は焦燥を感じずにはいられなかった。
まるで彼女が今この瞬間に消えてしまいそうな気がしたから。
「・・・"誰"のことを考えてる」
「春になると・・・桜が咲くとね、思い出すことがあるの。それだけよ」
それはきっと自分が知らない秀麗の過去だ。
懐かしそうに思い出に浸る秀麗に悔しさを覚える。
今彼女が考えているのは自分のことではない。