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□「侵蝕 〜終わりの始まり〜」 三万打フリー小説
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「−−…え…?」
相変わらず警鐘が鳴り響く中、秀麗は聞き返した。余りに小さすぎて、聞き取れなかったのだ。
そんな秀麗を清雅は再び強く抱きしめ、今度は耳元で囁いた。
「二度も言わせるな。お前が好きだ」
「−−!」
何故、何故、何故−−?
秀麗は頭が混乱し始めた。何をどう言えばいいのか分からない。大体普段の態度からして、好かれているとは到底思えない。なのに、何故、胸がざわめく……?
−−キケン、キケン、ヒキカエセ−
警鐘に従い腕から擦り抜けようとするが、清雅の腕はビクともしない。
(…嫌、怖い、こんなの清雅じゃない−−!)
思わず泣きたくなったが、清雅の前で涙を見せるのは絶対嫌だった。それだけは絶対に。だから、いつも通りに清雅を睨みあげた。
「−−…え…?」
いつもの挑発的な態度からは想像出来ない程、余裕のない表情。揺れる瞳−−
「…清雅…?」
「気持ちは嘘じゃない。他の男じゃなく、俺を選べ。そうすれば−−」
−−他の奴のことを考える暇がない位、愛してやるから−−
−−…ダメ、ダメヨ、イマナラマニアウ……
頭の中で、警鐘が鳴り響く。
しかし−−心は言うことを聞かなくて……
−−−いつの間にか、睨むことすら忘れて。
秀麗は清雅の胸にもたれ掛かった……
どちらがどちらを溶かしたのか…
それは神のみぞ知る侵蝕−−−
二人、溶け合って、その行く末は−−−
<終>