お題

□02. 愛してる…その囁きに縛られて
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「だから、もう嫌よ」

元からこんなの性にあわない。

仕事だとか言って、この男と会っているのを隠し続けるのは辛いし、もしも露見してしまったら……そんな事で悩むのは、嫌で嫌で堪らない。

「へえ」

馬鹿にしたように清雅は嗤う。

「何よ、その顔」

秀麗は悔しくなって以前、清雅に贈られた腕輪を投げつけた。

「―もう帰る」

踵を返し、室から出て行くが追ってくる気配はない。

本当は、わかっているのだ。





離れられない

それ程に愛してしまった。

深く深く。




秀麗は足早に清雅に与えられた室に戻ると、躊躇いがちに扉を叩いた。

中からは返事はない、が扉を開けると清雅が居た。

先ほどの事を詫びようと秀麗が口を開いた。

「ごめ「戻ってくると思った」

「え……」

清雅は秀麗の手を取ると、先ほど秀麗が投げつけた腕輪をつけられた。

その腕輪は、小ぶりではあるが、清雅が自分の物とよく似たものを作らせたのだ。

そして、妻ではなく秀麗に贈った。

心は、共に。

そんな意味を込めて。

「少しは解れよ」

「せ、いが」

「愛してる」

そう言うと、恭しく手の甲に口付けを落とした。

彼からは離れられない

自身を縛り付けるのは、彼ではなく、この想い。



愛してる…その囁きに縛られて



すべてが終わってしまうくらいなら、気づかないふりをしていたほうがいい。



 
 

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