岩男小説
□開戦間近
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俺に戦うこと以外の存在など存在しない。
わかってはいた。
全ては博士のために
俺にはそれ以外に何も無い。
ただ
ただ最近
突然にあまりにも沢山のデータが一斉に体中を駆け巡って処理仕切れずどうにかなってしまうのではないかと思うような時がある。
人間でいう悩むということがこういうことなのだろうか…?
それの正体がなんなのかうすらわかってはいたが俺はそれをマトモに受け入れたくなくて逃げていた。
それを認めた時にそれが本当に起きてしまいそうで
人間でいうならばこれは『恐怖』という感情なのだろうか。
今回の仕事も多くのロボット達を破壊した。
製造されて間もないうちは別に何も感じることはなかった。
いつもただの仕事だと割り切っていたはずだった。
ところが仕事の回数を重ねていくたびにいずれは己もこんなふうに誰かに壊されてしまうのかという不安が脳裏をよぎる。
足元に散乱したスクラップをそっと手に取るとまだ動いていた時の熱が残っていて生々しかった。
このロボット達にも動いていた時間というものが確かに存在していた。
こいつらにも兄弟がいたのだろうか??
こいつらにも生活があったのか??
機能停止する時はどんな感覚だったのだろう?
俺もいずれこうなる??
そのデータの洪水を処理しきれずに思わず頭を抱えてその場にしゃがみ込む。
以前はこんなことは考えることは無かった。
なんだか変わってしまう自分が怖くて…。
自分が無くなってしまいそうで…。
荒れ果てた工場の中は全ての物が機能を停止していて物音一つしない空間が広がっていた。
部下達は先に帰した。
誰にも干渉されない場所で一人でゆっくり考えたかったから。
ああ、でも早く帰らないと…
時間が無駄になってしまう。
矛盾と混沌。
自分がわからない。
メタルマンはやり場なない気持ちに困り果て深く息を吐き、手にしたスクラップをギュッと握りしめた。
その時、背後から近寄る足音を感じ落ち着いていた全身のセンサーが一瞬でフル起動する。
メタルマンは立ち上がりメタルブレードを構えカメラアイの感度を上げて徐々にこちらへと近寄る相手が誰なのか慎重に見極めようとした。
予測では後三歩程で姿が見えるはず……。
もし相手が敵なら油断は許されない。
一歩
二歩
三歩
曲がり角の壁の向こうから姿を表したのは大柄な青いボディのロボット…。
メタルマンは思わず攻撃しそうになったのを踏み留まり、あまりの驚きでメタルブレードをその場へと落としてしまった。