●GIOGIO●

□煙の行方
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オレンジ色の光の中車を走らせる。

朝と夜の間のローマの街にはもう人影は皆無でまるでだれもいない世界にとりのこされたようだった。

先程まで助手席でひたすら喋っていた男は今はまるで別人のように静かに寝息を立てて眠っている。
こいつを見ているとつい昔付き合ってた女を思い出してしまう。
確か別れた後『そんなところが好きだった』って気付いて泣いたっけか…。


こうやって当てのないドライブを昔は暇さえあれば毎日のようにしていた。

俺は運転。

右側にはいつもこいつ。


女の話し。

金の話し。

夢の話し。


いろんな話をしたもんだ。
思えば気付いた時から隣にはこいつがいて何をするにもいつも一緒だった。
俺には足りないものをこいつは沢山持っていてその華奢な体のどこにそんなパワーがあるのかいつも不思議で仕方なかった。

俺は一休みしようと道路の脇に車を停めるとエンジンを止めるとダッシュボードの上にのせてあったタバコの箱を取ると一本だけとりだしてくわえて火を点けた。
無音になった車内は耳鳴りがするほど静かでシュッというライターを点火する音だけがやけに響く。
サーレーがタバコの煙を毛嫌いすることを思い出しパワーウィンドウで窓を少しだけ開けた。
冬の匂いとともに身震いするような真冬の寒気は暖房が効いていた車内へ容赦なく侵入してくる。
細く吐いた白い煙は窓の外へ当てもなく漂っていく。その行く先なんて誰も知らない。なんだかその情景はまるで俺のやり場のない気持ちを現しているようで少し切なくてなんだか喉元がつまるような感覚に陥った。
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