●その他●
□いらない子
1ページ/1ページ
あたしはダメな子
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
お父さんお母さんみんなこんなあたしを許して
酒蔵家に生まれ『千里(さくらせんり)』という名前をもらって早18年。色々とわけありな男尊女卑の風習が残る人里離れた山奥の小さな村で育ち、女でなおかつ運動も勉強も成績がどちらも今一つだったあたしはいつも親族に『いらない子』と言われ続けてきた。
ただ美術と音楽だけはいつもずば抜けてよい評価をもらっていたのだがそれさえも『下らない才能』と言われののしられ例え入選や賞をとろうとも彼らからは評価されることはなかったのだ。
ただ家族は仲が良かった。
父、母、弟と妹2人。
家族だけが自分を認めてくれた。
しかし1年前亡くなった祖父の遺産相続をめぐって親族内で抗争が起きる。
父はストレスで酒浸りになりついには暴力をふるいはじめ仲のよい家庭の姿は崩れさった。
ついにあたしは嫌気がさし逃げ出した。
すべては衝動だったのだ。
気付いた時にはトランク一つだけの荷物と携帯電話に財布だけをもって一時間に一本しかない村営のバスに乗っていた。
田舎の村にはこのバス位しか公共の交通手段が無いがその癖利用者も殆んど居ない。
携帯を開き時刻を確認するとAM9:30過ぎ。
平日なのもたたってなのか車内にはあたしと運転手しかいない。
車内にはバスの揺れる音とエンジンのうなり声だけが響く。
「若いのがバスなんて珍しいね。どこにいくんだい??」
運転手に話し掛けられてふと我に返る。
行くとこなんてなかった。
でももう帰る場所もない。
「東京へ…」
あたしは口からでまかせを言う。
「へぇー。何しにいくんだい??」
「友達が住んでいて遊びにいくんです。」
嘘は得意。
バカな親戚連中になにもかも本当のことなんか言う必要はないからいつも嘘をついていたから。
ああ。そうだ。
東京にいこう。
口からでまかせだったが今思い付く場所はなぜかそこしかなかった。
当てはないけど…。
でもきっとこんなところに居るよりずっとマシ。
全てが集まる街へ。
なにか変わるかもしれない。