突発連載

□罪人縋りし蜘蛛の糸
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 愛してるの言葉の代わりに、永遠に途切れぬ絆を。
 甘い快楽の代わりに、絶対的な信頼を。
 暗い独占欲と胸を焦がす想いと引き換えに、お前の笑顔と自由を。

 斬りかかって来た総悟と鍔迫り合い。
 恐ろしく緩慢で濃厚な一瞬。
 眼が合う。
 虚ろな瞳に向かって、笑いかける。

「総悟」

 分かってるよ。

 本当はお前、壊れても操られてもいないんだろ。
 ただ、苦しい思いを、俺に拒絶されてどうしようもなくなっただけ。

 おまえは、そんなに弱くない。

「―――――・・・・・」

 力を抜いて耳元で囁く。
 首元まで迫った刃が、地に落ちた。

「ひ・・・・じかた、さ・・・」

 間近にある瞳から涙が溢れ出す。

「総悟!?大丈夫か!!」

 背後で警戒してくれた近藤さんが、

「隊長!!正気に戻ったんすね!!!」

 一番隊の隊士達が、喜びの声を上げて駆け寄ってくる。

「総悟・・・・」

 呆然と立ち尽くした総悟を抱き寄せようと手を伸ばす。

「感動の再会、と言いてぇところだが。そうは問屋が卸さねーぜ」

「!!!」

 ベベンっと琵琶の音が響いたかと思えば、足元の船底が真っ二つに割れる。

 下にはポッカリと暗い水底が広がる。

「土方さんっ!!」

 水に飲み込まれる寸前、銀の糸で吊り上げられた総悟の姿が見えた。


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